二足の草鞋は履けぬ

2020/2/11/6:00

さてさて、大林宣彦監督メッセージ集出版プロジェクトがスタートしたが、某雑誌の編集長職に就きながらプロジェクトを進める自信はまったくなかった。編集という仕事の現場は過酷を極める。今でこそ徹夜をすることはなくなったが、50歳を過ぎた頃(もはや働き盛りのピークは過ぎ去った頃)に編集部に2泊して原稿を書いていたこともあった。すでに体はボロボロ、気力も尽き果てようとしていた。
そこで一大決心。プロパー社員編集者に業務委託契約を来年3月の契約満了以降は更新しない旨を2019年9月1日に告げた。二足の草鞋は履けぬという思いもあったが、後任にはそのプロパー編集者しかいない(というか、本来そうあるべきだ)という確信があり、難なく事は運ぶと思ったのだが、その見込みは相当に甘く、難なくどころか、しばらくの間は苦難続きとなってしまった。
そのことについては、ここでは割愛するが、会社側といろいろ揉めた結果、来年3月の契約満了を待たず、1月末で業務委託契約を終えるということで落着。
その時点でプロパー編集者には、「辞めたあとは自分たちのNPOで大林監督の仕事のお手伝いをする」とは伝えていたのだが、まさか出版社を設立することになるとは夢にも思っていなかった。まさに埒外のことが動き出し、それがすべてメッセージ集『キネマの玉手箱』の実現に転がっていく。大林監督がよく口にする「奇妙奇天烈」なことが続けざまに起こったのである。

大林宣彦氏プロフィール

1938年1月9日、広島県尾道市生まれ。映画作家。自主製作映画の先駆者としてCMディレクター、映画監督として活躍、“映像の魔術師”と称されている。1977年に『HOUSE/ハウス』で商業映画に進出。代表作は『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の“尾道三部作”、『この空の花―長岡花火物語』『野のなななのか』『花筐/HANAGATAMI』の“大林的戦争三部作”など多数。2004年に紫綬褒章を受章、2009年に旭日小授章を受章、2019年の文化功労者に選ばれている。2016年8月に肺癌が判明、ステージ4まで進行しており「余命6カ月」、のちに「余命3カ月」と宣告されるが、抗癌剤治療が奏効し、現在は「余命は未定」。2020年4月に最新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』が公開。

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