翔んで茨城 前編

2020/3/23/5:35

いよいよ大林宣彦監督メーセージ集の企画がスタートし、百姓は今まで取りためていた原稿の構成作業に着手した。その中で、本の表紙をどうするか、という大きな問題に直面した。そこで百姓が出したアイデアが、森泉岳土氏のイラストだった。森泉氏は、大林監督の娘である大林千茱萸(ちぐみ)さんの夫で、大林監督からすれば、娘婿の存在だ。2017年に公開された「花筐/ HANAGATAMI」のポスターを描き上げたのは森泉氏であった。作品の登場人物を墨汁と爪楊枝などを使って描くという彼の独特な画法である。我々は大林監督の取材の際に、そのポスターを拝見したのだが、ダイナミックかつ繊細で、心が惹きつけられてしまった。であるならば森泉氏に表紙を担当してもらうというアイデアに、鬼も人たらしも異論はない。「きっと、大林監督も喜んでくれるだろう」「大林監督ファミリーが結集してこの本に関わってくれる!」という繋がりを持ったことにも、大きな喜びを感じていた。
そうとなれば早速、森泉氏にコンタクトを取らなければならない。またしても人たらしのミッションが始動した。森泉氏の連絡先を予め教えていただき(この時とても夢中だったので、今となっては連絡先をゲットした手段がまったく検討がつかない)、たどたどしくこの企画を伝えた。すると妻である千茱萸さんから「10月27日に森泉岳土のワークショップがあるのでいかがですか」というお誘いのメールが届いた。添付された案内書をみると、なんと開催日はその週末の土曜日で、場所は東京ではなく、茨城県にある筑波大学。予想外な早さでの案内だったが「行くしかない!」と直感した人たらしは、表紙に森泉岳土氏の名を挙げた百姓にも伝えると、「私も行きます!」と言ってくれた。実は百姓のこの発言には裏(思いやりか?)があった。ワークショップの開催場所である筑波大学は名の通り、茨城県のつくば市にある大学である。人並み外れた方向音痴でもある「人たらし」がひとりでそんな遠いところまで行って、はたして森泉氏に会えるのだろうか…と百姓は心配したのだ。
10月27日、人たらしは森泉岳土氏に会うために、百姓とともに筑波大学へと向かった。
百姓のナビゲーションで予定より早く筑波大学へ到着し、ホッとしたのも束の間、キャンパスの静寂さに違和感を覚えた。校内も暗い。なにか変だと様子を探ると、なんと、筑波大学全館の計画停電だったのだ。驚きを隠せないふたりであったが、とりあえずワークショップが予定されている教室へと向かう。ところが、どこもかしこも真っ暗で人っ子ひとりいない。「こんなところでホントにやるの?」という不安がふたりの脳裏をよぎる。そこで諦めないのが百姓だ。根気よくiPhoneと睨めっこして、森泉氏のTwitterにたどりついた。百姓が「場所が変わってます!」という一言で一目散に変更された場所に到着して、ミッションである森泉氏と奥様の千茱萸さんとの初顔合わせが実現したのだった。
森泉氏も千茱萸さんも、大林監督に匹敵するほどとても優しい物腰で、穏やかな気持ちにさせてくれる人柄だった。「大林宣彦監督メーセージ集の表紙はぜひ森泉氏に」という提案を、おふたりは快く引き受けてくださった。
またしても百姓の存在に救われた茨城行脚であった。

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