何十年かぶりに見た『異人たちとの夏』

2020/5/13/5:44

昨晩、WOWOWで大林宣彦監督作品『異人たちとの夏』を見た。何十年かぶりのことでストーリーは漠然と記憶していたのだが、あらためて見て、その鮮烈な映像表現に驚いた。
『異人たちとの夏』は1988年の作品で、原作が『岸辺のアルバム』『ふぞろいの林檎たち』の山田太一、脚本が『傷だらけの天使』『黄金の日日』の市川森一。大林監督を含めて当時、50歳前後の、脂の乗り切った3人の作品なのだから、面白くないわけがない。壮年のシナリオライターが子供の頃に死に別れた両親と、かつて暮らしていた浅草で会うようになり…というファンタジーなのだが、物語が進むうちに謎の美女との逢瀬というメロドラマが加味され、最後はホラーに転じていく。幻想的でありながら一方で恐怖心をあおっていく映像表現に目は釘づけになってしまった。
それにしても風間杜夫、名取裕子、片岡鶴太郎のなんと若いことか(どういうわけか、秋吉久美子だけはあまり変わらないように見えたのだが…)。風間と名取のベッドシーンはこちらがいい齢になってしまったので、若い頃とは違った意味で、見ていて目を覆いたくなるくらいに恥ずかしいものだった。
鶴太郎の演技も光る。昭和30年代のオヤジの雰囲気まる出しだ。Wikipediaには「主人公の父親役は、監督の大林が片岡の江戸弁を気に入り抜擢したもの。ところが原作者の山田太一が『あんな太ったヤツの寿司は食えない』と反対した。それを聞いた片岡は必死のトレーニングをして減量し撮影に間に合わせた」とある。鶴太郎が演技派の役者として開眼したのは、『異人たちとの夏』がきっかけになっているのかもしれない。
何十年かぶりに見て、新しい発見があった。劇中、チラリと登場する八つ目うなぎ屋のオヤジ。なんだか妙に存在感がある。気になって調べてみたら『ゴジラ』の本多猪四郎監督ではないか。『キネマの玉手箱』でも記されているが、大林監督は本多監督を敬愛していた。そのためのカメオ出演だったのかと得心がいった。
大林監督の最近の作品、特に『海辺の映画館―キネマの玉手箱』はピカソの絵画のようなのだが、ピカソには幼少期からの抜群のデッサン力があったから抽象画も人々の感動を呼ぶといわれている。『海辺の映画館―キネマの玉手箱』もそれに通じる。『異人たちとの夏』を見て、あらためてそう思った。

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