「大東亜戦争の記憶」を綴る手記集、第4集。
「境界BORDER」シリーズは、国家同士における相容れぬナショナリズムの境界、その諍いから生じた生と死を分けた境界、戦前・戦中・戦後という時代の境界を赤裸々に綴る戦争体験者の手記集です。
第3集まで23人の手記と特別寄稿「戦争花嫁」を収録しましたが、第4集で新たに7人の手記と、シベリア抑留についての特別寄稿が加わります。
満洲を祖国として疑わず育った﨑山ひろみさん、朝鮮で育ち帰国後、爆撃による久留米の惨状を目の当たりにした吉岡友次郎さん、被災者310万人を数える東京大空襲を奇跡的に生き延びた岡崎吉作さん、戦後、シベリアとウクライナに抑留された近田明良さん、東京大空襲の悲惨な光景を絵として描き残してきた吉野山隆英さん、空襲による命の危機が迫る中で新潟県で疎開生活を送ることになった杉本孝一郎さん、二・二六事件から破滅へ向かう日本を見てきた中村昭三さん。7人の手記を収録。また海軍士官として朝鮮の平壌に赴くも終戦後、捕虜として強制労働に従事した石村富生さんの自分史を「境界」用に再構成した原稿も特別寄稿として収録されています。
題字「境界」は、満州で育ちソ連兵に銃撃された俳優・宝田明さん(2022年3月14日他界)が揮毫したものです。
[編集部より]
「境界BORDER」シリーズの第1集が出版されたのは2022(令和4)年2月。3年半の月日が流れる中で「境界BORDER」シリーズの理念“不戦不争”は自らが意思を宿して枝葉を伸ばすかのように静かに広がり続けてきました。
2022(令和4)年8月には第1集出版記念の講演会「大東亜戦争の記憶」を東京・赤坂の乃木神社尚武館道場で開催。続いて2023(令和5)年7月と2024(令和6)年7月に2年続けて日比谷カレッジ「境界 戦争体験者の証言」を日比谷図書文化館で開催しました。
2024(令和6)年4月に弊社から刊行された大島満吉さんの著書「流れ星のかなた」は、「境界」第1集に収録された「遥かなる平原からの叫び」をきっかけにしたノンフィクション作です。大島さんはほとんどの日本人が知らないソ連軍による民間日本人虐殺事件“葛根廟事件”の数少ない生還者の一人で、その事実が葬り去れることのないよう89歳になる現在も講演活動を続けています。2024(令和6)年9月には大島さんの出身県、群馬県の下仁田町にある“女性村ねぎぼうず”で弊社主催の講演会を行いました。
戦前・戦中の日本を語れる人が少なくなってきました。来年(2025年)は終戦から80年という節目の年です。「境界BORDER」シリーズに綴られた“大東亜戦争の記憶”は未来に生きる人たちに託すメッセージでもあります。本書はルビ(ふりがな)を多用した丁寧な編集に努めました。児童から生徒、学生まで若い世代にも読んでいただきたい本です。
構成 安木由美子 工藤尚廣
出版年月日 2024年10月11日
ISBN 978-4-911042-06-9
仕様 四六判・フランス製本
頁数 246頁(本文)
定価 1,800円+税
■著者
﨑山ひろみ
吉岡友次郎
岡崎吉作
近田明良
吉野山隆英
杉本孝一郎
中村昭三
■目次
失われた五族協和の祖国・満洲 﨑山ひろみ
敗戦を実感した久留米の惨状 吉岡友次郎
隅田川の花火で甦る戦慄 岡崎吉作
遥かなる祖国への道程 近田明良
“平和の種”として描いた地獄絵 吉野山隆英
忘れられない幼い浮浪児たちの目 杉本孝一郎
「君たちはどう生きるか」を礎に 中村昭三
[特別寄稿]岸壁に打ち振る小旗目に沁みぬ故国の山河ダモイの歓喜 石村富生
あとがき 吉野山隆英さんと近田明良さんに捧ぐ 工藤尚廣
時代背景