五七五の随想録

旅行記者40年コサブロウが詠む俳句漫遊紀行

日本と世界の旅の記事を書き続けて四十余年。日本旅行作家協会理事のコサブロウが訪ね歩いたのは、47都道府県はもちろん世界43の国と地域に及ぶ。1998年から始めた俳句は早々のビギナーズラックで文壇の重鎮・清水基吉氏に評価され、以来、23年間、俳句を詠み続けてきた。
現代の松尾芭蕉、与謝蕪村ともいうべきコサブロウが自らの足跡を俳句と散文で綴る随想録。

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目次

はじめに

異国を詠む

沁みわたる柘榴ジュースやエルサレム
シベリアの川を下りてキャンプ地へ
迫りくるアフリカ象や秋の星
ラグビーの南アフリカ疾走す
サバンナの風に吹かれてビールかな
コーランの細き響きや南風
くらげなぞ砂でこすれと父の言
夏空に白き家並みエーゲ海
オタクサと呼ばれし国の濃紫陽花
滝壺の飛沫激しきナイアガラ
びしょ濡れのラオスの古都の水鉄砲
ラトビアの夏至の祭りの笑顔かな
晩秋の紳士の国の老舗パブ
芳醇な葡萄の里やオカナガン

酒と食を詠む

すっぽんの雑炊旨し京の町
春の宵ウツボ食いたる土佐の国
目も骨もありて無念のしらすかな
丸ごとのレタス炒める夕べかな
安心院てふ葡萄の丘の白ワイン
憂きことはひとまず置いて初鰹
寒月や息をひそめし大干潟
酒鮓や薩摩おごじょも呑みたかろ
どてら着て行きつ戻りつ朝の市
海のなき栃木で食す河豚料理
鮟鱇や仕切りうるさき鍋奉行
鰰や庄内の夜に酌み交わす

いで湯と名旅館を詠む

冬の夜の妖し楽しき温泉街
初戎たわし買いたる京の町
信濃路の里でいただく蓬餅
修善寺や春爛漫の頃にまた
心地よき素足で歩く北の宿
冬の朝美肌の宿の短歌膳
神鹿の声遠のくや奈良ホテル

産地を詠む

雲丹漁の磯舟浮かぶ利尻島
吊るされし塩引き鮭の面構え
床上げの一椀重き蜆汁
はじかれし甘露醤油や寒の鰤
富士を背に三浦大根引っこ抜く
もぎたての枇杷の旨さよ総の国
大柚子のごろりとおわす大雄山
メモ書きの上に置かれし青林檎
蓴菜の若芽摘みたる小舟かな

伝統を詠む

夏の夜のヤスで突きたる湖の幸
飲む酒を束の間忘る鵜飼かな
鯖鮓の味わい深き祗園かな
正月の神棚飾るしおかつお
鉄瓶の白き湯あかの余寒かな

史実を詠む

白蝶の石屋根越ゆる対馬かな
出雲なる国のロマンや神無月
鰊漁栄えし町のローカル線
少年の日のまざまざと青蜥蜴
風琴の調べ流るる春の海
蓑虫の糸一本の覚悟かな

自身を詠む

気兼ねなき一服空へ冬木立
遠雷やぴくりと右へ猫の耳
南蛮の一把残りし無人店
思うこといささかありて日記買ふ
土の香のふと懐かしく茗荷汁
無花果や母に呼ばれし勝手口
秋の夜の残らずくくる古雑誌

解説 芦原伸(作家・日本旅行作家協会専務理事)

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