闘病中の姪っ子に届けたい大林さんの“なにか”

2020/5/9/5:41

ユニコ舎に群馬県渋川市のTさん(59歳)から『キネマの玉手箱』の感想が寄せられました。Tさんの了承を得たうえで、ここに掲載させていただきます。Tさん、ありがとうございました。


どのように表現すればいいのだろうか…。大林さんはこの本が出る頃にはこの世にいないなんてことはまったく考えていないことだけは伝わる。遺言めいたところは一切ない。生きていくための勇気と希望のメッセージを受け取ったような気がする。是枝裕和監督が書いた「あとがき」には、「通読して最も感銘を受けたのは『生命の章』でした。肺癌のステージ4、余命半年を宣告されてもまったく焦りがない。いや、病気であることさえご自身が楽しんでいる。なんなんだ、『大林宣彦』という人間は」と記されているが、まったくその通りだ。「せっかく罹患したのだから治療を楽しむ」姿勢が余命半年を遥かに越えて、3年半という時間を得たのだろう。しかも、その時間を無駄にはせず2作も映画を作り上げたのである。

実はこの本は大林作品のファンというだけで買ったわけではない。私の姪っ子が難病と闘っているためでもある。まだ、30代という若さで難病を患った姪っ子になにかを届けたかった。“なにか”とは漠然としていて、これだというものが見つけられないでいた。そんなとき出会ったのがこの本であった。大林さんの言葉には“なにか”があると確信した。この本を姪っ子にプレゼントすることに決めた。

しかし、大林さんなら今の新型コロナウイルス感染症をどうとらえるのだろうか? 「癌を悪者にしてはいけない」という人である。ウイルスと闘うのではなく共存することを訴えるかもしれない。いや、ウイルスが猛威をふるうなか、「共存」などと口にはできないが、「ウイルスに翻弄されるのはやめましょう」くらいは言うような気がする。
そう翻弄されてはいけないのである。それが私が大林さんから受け取った“なにか”である。

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