暮らしの中の哲学エッセンス №2

安木由美子著『閑事 草径庵の日々』刊行(11月24日)記念に安木さんがかつて千葉県の新聞販売会社が発行していた文学通信紙『総国(ふさのくに)逍遥』(2010年7月~2013年2月)で連載していたミニコラム「暮らしの中の哲学エッセンス」をリバイバル公開。『閑事 草径庵』以前の安木さんの人生哲学の一端に触れられる特別連載です。

『閑事 草径庵の日々』

原っぱの時間

結婚して最初に住んだのは、県北西部に位置するお醤油の町、野田。息子は茨城との県境近く、利根川そばの畑に囲まれた幼稚園に通い、朝から夕方まで体じゅうで遊んだ。夕方のお迎え後も、日の長い時は7時過ぎまで近くの原っぱで友達と遊び、帰りの車の中ですとんと落ちる眠りは朝まで続いた。今日一日の幕が夕暮れと共に下り、真新しい朝が始まる…そんな日々だった。
スピノザによれば、美味しいもの、瑞々しい自然、芸術…いろいろなものから楽しみを見つけ、力と英気を養うことは思慮ある人の生き方であるらしい。幼い日の原っぱの時間は、やがて楽しく暮らすヒント、心の原っぱになっていくのかも。小学6年生になり、心身共にぐんぐん成長し始めた我が子の日常に、うっすらとそんなことを感じている。
(『総国逍遥』2010年9月号より)

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