暮らしの中の哲学エッセンス №6

安木由美子著『閑事 草径庵の日々』刊行(11月24日)記念に安木さんがかつて千葉県の新聞販売会社が発行していた文学通信紙『総国(ふさのくに)逍遥』(2010年7月~2013年2月)で連載していたミニコラム「暮らしの中の哲学エッセンス」をリバイバル公開。『閑事 草径庵』以前の安木さんの人生哲学の一端に触れられる特別連載です(毎日更新中!)。

『閑事 草径庵の日々』

瑞々しい日々

厚ぼったいコートを着る季節になって、ようやく息子の衣替えをした。数年前まで一年中半袖半ズボンだったのでつい後回しに。最近では洗濯の済んだ服は出しっぱなしで、それを日替わりで着ている。彼のたんすは簡単な衣装ケース。間に合わせのつもりが気付けば赤ちゃんの頃から結局これひとつ。冬物を収めようと引き出しを開けたら、中からジャージが飛び出してきた。見ると六つの引き出しはどれも満杯。そうか、こんなに大きくなったんだ…。見慣れた衣装ケースが急に小さく思えた。
見ているようで見ていないことが日常にはたくさんある。わかった気になっていることは想像にすぎない、とスピノザも言う。思いがけない発見や楽しみに、ふと心瑞々しくなる、そんな日々を今年も願う。
(『総国逍遥』2011年1月号)

トップへ戻る