暮らしの中の哲学エッセンス №11

安木由美子著『閑事 草径庵の日々』刊行(11月24日)記念に安木さんがかつて千葉県の新聞販売会社が発行していた文学通信紙『総国(ふさのくに)逍遥』(2010年7月~2013年2月)で連載していたミニコラム「暮らしの中の哲学エッセンス」をリバイバル公開。『閑事 草径庵』以前の安木さんの人生哲学の一端に触れられる特別連載です。(毎日更新中!)

『閑事 草径庵の日々』

新緑の子ども 

子どもの1日はあっという間で、1カ月は途方もなく濃密だ。中学生になった息子が友達とボーリングに行ってきた。別の中学校に進んだ友達にも会えて「懐かしかった」という。ほんの2カ月前まで一緒にランドセルを背負ってぷらぷら道草を食っていたというのに、もう懐かしいと感じる、そんな子どもの時間の濃密さを思う。先延ばしや繰り返しの影で、やるべきこと、やりたいことがこぼれ落ちていく大人の毎日に、子どもは待ったなしの感覚を呼び覚ます。
先日、遠足に向かう小学生の団体と電車で乗り合わせた。駅のホームで扉が開いたとたん、ぱっと花開いたような活気が車内に満ちた。色とりどりのリュックを背負った背中から体中の細胞がはねて見えるようで、それは窓の外の緑と同じくらいまぶしかった。
(『総国逍遥』2011年6月号)

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