暮らしの中の哲学エッセンス №14

安木由美子著『閑事 草径庵の日々』刊行(11月24日)記念に安木さんがかつて千葉県の新聞販売会社が発行していた文学通信紙『総国(ふさのくに)逍遥』(2010年7月~2013年2月)で連載していたミニコラム「暮らしの中の哲学エッセンス」をリバイバル公開。『閑事 草径庵』以前の安木さんの人生哲学の一端に触れられる特別連載です。(毎日更新中!)

『閑事 草径庵の日々』

余白の早起き

生まれつき早起きなのか、赤ちゃんの頃は、4時起きして門の前の掃き掃除をする祖父の、一仕事終えた膝に抱えられて早朝の時間を過ごしていたという私。結婚してからもずっと5時起き。この4月からは息子の部活の朝練やパート仕事を始めたこともあって、今夏は気づけば4時過ぎに起きる日々。支度が間に合わないわけではないけれど、家族が起きる前のひっそり静かな朝の時間は暮らしの中の余白のようで、自分のためのゆとりと活力のもとになる。
主婦の一日はほとんどが人のための時間である。時折、家の用事すべてをゴミ箱にでも放り込んでしまいたいと思うこともある。スピノザは、満足とは人が自分自身の活動力を見つめることから生ずる喜びである、と言った。無口な祖父の膝の温かさが教えてくれたのは、ひょっとしたらそんな喜びの在りかただったのかも。そう思ってみたりするのも、やっぱり朝の静かなひとりの時間なのだった。
(『総国逍遥』2011年9月号)

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