「送別歌」から見えてくる「戦争と平和」(村上新聞掲載)

昨年3月14日に死去された俳優・宝田明さんは幼少期を満州で過ごしました。ユニコ舎刊の『送別歌』の題号は、宝田さんが満州から日本への過酷な引き揚げを思い出して詠んだ漢詩から引用したものです。そこには「いつかきっと会いにいきます」という、満州へ望郷の念が込められています。
敗戦後、宝田さん家族が目指したのは宝田家の祖先が眠る新潟県岩船郡村上町(現・村上市)でした。宝田さんは満州で生き別れた実兄と村上で再会を果たしています。
今年も間もなく「終戦の日」がやってきます。宝田さんは『送別歌』で満州での日々、終戦後の日本の社会、俳優として人生を綴りましたが、その根底にあるものは「不戦不争」の理念でした。

宝田明さんのもうひとつの郷里である村上市の地元紙「村上新聞」は7月29日付で『送別歌』のプロローグ部分を引用して「戦争と平和」の特集記事を掲載しました。
ロシアによるウクライナへの侵攻、北朝鮮のミサイル問題、台湾有事の危機など世界情勢は緊迫し、”新たな戦前”の兆しさえうかがえます。
宝田さんは『送別歌』のラストで次のように綴っています。

世界中の人が互いに礼儀と経緯をもって共に生きてほしい。
手を携えて平和を共に目指してほしい。
それが「私の願い」です。

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